「「むっくり」とした形を山中の素地屋さんで作っていただくのに時を要してしまい、また塗りも丹念にいたしましたので三年位の年月がかかってしまいました。」
この刳り物の盆は大変丈夫なものです。 兄 野田行作が芸大を卒業した頃に制作したものの写しです。
七輪の炭火で砂糖を懸命に焦していた姿をはっきりと覚えています。これを乳鉢で丹念に擂り、漆に混ぜて下地を作るのだと云っていました。その下地で作ったのが初代の朱9寸八角盆です。兄は下地、塗り方、装飾と、さまざまな試みをした人で、産地の伝統の中にいる人間ではない、いくつかの独自の技法を生み出しました。その殆んどを、懐石辻留の御主人、先代の辻嘉一氏と当代辻義一氏が受け入れ、理解してお買い上げ頂いて、五十年余りも経つ今も健在で、ますます美しくお使い頂いているのは本当に嬉しくありがたいことです。この盆も本店で今も日々お使い頂いていて、根来のようになっています。
この度、奥田志郎さんに造っていただいたものはお砂糖の下地ではありませんが、輪島の下地を使って作ったものです。この「むっくり」とした形を山中の素地屋さんで作っていただくのに時を要してしまい、また塗りも丹念にいたしましたので三年位の年月がかかってしまいました。
手盆(運び盆)として、また八寸のようにもお皿のようにもといろいろにお使いいただいて、辻留さんのように根来にしてほしいものと思っています。
工芸店ようび 店主 真木
大好きなうつわがより素敵に見えるのには、
盛り込む料理にプラス、うつわの居場所が大切です。
工芸店ようびは、毎日の食卓におすすめの「にちにち膳」など、
ハレの日、ケの日にあわせて、様々なお膳・お盆をご用意させていただいています。
たとえば、豆皿蒐集家の方には、こちら八角盆はいかがでしょうか!^^