「人間的なあたたかさのある形をつくってみたいと思われたのは奥田氏の慧眼でした。」
・・・前略
この自然の営みともいえる木の習性を活かして、人間的なあたたかさのある形をつくってみたいと思われたのは奥田氏の慧眼でした。
四十一年前、初めて奥田さんの仕事場に伺った時、土間にうず高くこの素地が積まれていました。「200ヶ位はあるでしょうけれどよいものを選んで塗ろうと思いますが、売れるんですかね」とつくってはみたものの不安そうでした。私はその美しい形に息をのむ想いでさっそく塗っていただくことをお願いし、二年後やっと出来上がってまいりました。その時のうれしさは言い表せぬ程で、思わず抱きしめたのを覚えています。
その200ヶはこの40年の間に少しずつ塗っていただいてなくなりましたが、以後はこの手法で弟の志郎さんにお願いして作っていただいております。今度のは少し歪みは少ないように思いますが、塗ったものもまだまだ歪む可能性はあり、漆という塗料はその歪みのために割れたり亀裂が入ったりはしないものなのです。その柔軟性は驚くべきもので、漆というものの特長です。
この美しさを解っていただきたいと祈りつつ、この御紹介をさせていただきました。お使いみちは無数にあり、四十年前のものは今もますます輝きを放って身近にあります。
工芸店ようび 店主 真木
お正月の準備いかがでしょうか。
季刊誌「ふでばこ」でご紹介していただいた『いつも』の「生木鉢」に煮しめを盛ってみました。
普段使いの生木鉢も、合わせるうつわでハレの日にも大活躍です!^^