漆器・輪島塗:朱竹靴すべり・大・奥田志郎
「玄関にかけていただいて絵になるような美しいものに・・・」
このくつすべりを造り始めてもう三十年は超えました。
少しずつ改善しながら今の形になり、使いやすさも美しさもこの数年はこれで落ち着いております。
お玄関にかけていただいて絵になるような美しいものにしようとしますと、どうしても紐を吟味しなくてはなりません。この紐は、京西陣の唐織を織るための平糸を二色組合わせ、組紐屋さんで四ツ組と申す組み方で作っております。
ゴムと云うものがなかった時代、例えば冑を括る紐などはこの平糸(真綿糸)という撚りのかかっていない糸を寄せて組む組み方で作っていました。括ったところが解けない、のびても元に戻る、つややかで美しいなど、要するに本来の紐の条件を備えているものなのです。
この紐がなくてはならぬものであることは、お手に取ってお確かめ下さいませ。
材料は孟宗竹で、表面に縞のようなデコボコがあり、拭漆をいたしますと縦縞が出たりします。また、竹の身の方は、無数の空気穴があるため、施漆の際、下地はじゅうぶんしていますが漆を少し吸いこんで小さなえくぼになっている部分がある場合もございます。ご理解くださいませ。
落としてしまうと先が特に駄目になりますが、先日、落とされて先が傷ついたものをお直ししたところ又新しく生まれ変わって、今もまだ使っていただいています。
工芸店ようび 店主 真木
今年の敬老の日は9月15日。
散歩が好きな方へ、「靴すべり」の贈り物はいかがでしょうか。